難関国家資格と言われている中小企業診断士に独学で合格するのは簡単ではありません。
しかも、受験者の多くは本業でも重要なポストを任され、家でも育児・家事に追われている忙しい中堅社員の方ばかりです。
そんな方たちにとって無駄というのは嫌いな言葉の一つです。
そこでこの記事では独学合格に向けてのロードマップを完全公開していきます。
試験内容と合格率
中小企業診断士の試験は年に一度だけ行われる国家試験で、試験は一次試験と二次試験(筆記試験)・二次試験(口述試験)の3回あります。
一次試験は7科目もあり試験科目は以下になります。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・政策
上記7科目の中で、財務・会計、企業経営理論、運営管理は二次試験にも大きく関わってきますので特にこの3科目は理解度を高めておく必要があります。
特に、財務・会計は苦手意識が強い受験生が多いので、この科目を得意にできるかは合否の大きな分かれ目になります。
財務・会計は一番目か二番目に勉強する科目にしましょう。少しでも早く合格点の目処が立つと他の科目の勉強に余裕ができます。
二次試験(筆記試験)は以下の4科目です。
- 事例Ⅰ(組織・人事)
- 事例Ⅱ(マーケティング・流通)
- 事例Ⅲ(生産・技術)
- 事例Ⅳ(財務・会計)
一次試験はすべてマーク式ですが、二次試験はすべて記述式です。
二次試験は与件文からその企業の課題を読み取り100字~160字程度で解答を記述します。
試験時間は各科目とも80分ですがこれほど80分が短く感じることがないくらい時間との闘いになる試験です。
また、一次試験同様に事例Ⅳ(財務・会計)が苦手な受験生が多く、事例Ⅳ(財務・会計)が得意なだけで他の受験生をリードできます。
二次試験(筆記試験)は、”1点をもぎとろう”という気持ちが非常に大切になってきます。
二次試験(口述試験)は面接官二人からそれぞれ2問ずつ合計4問の質問があり、それに口頭で回答する試験になります。
合格率が高い試験とはいえ、最後まで気を抜かずに臨むことがとても大事です。
それぞれの試験の合格率は以下となっています。
二次試験(筆記試験) → 合格率:20%弱
二次試験(口述試験) → 合格率:99%
一次試験の合格率はずっと20%~25%で推移してきていましたが、令和に入ってからは合格率が30%を超えてきて易化傾向が見られます。
一方、二次試験(筆記試験)は毎年合格率が20%でほぼ一定で推移しています。筆記試験後の口述試験は合格率が100%の年もあるくらいです。
公式発表されていませんが二次試験(筆記試験)は相対評価という噂があります。合格率が毎年一定であるため、上位20%に入ることが重要になります。
合格条件と科目合格制度
中小企業診断士試験は合格条件をみていきましょう。
まずは一次試験です。
【合格基準】
① 第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
② 科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
要は、『各科目は最低でも40点は取ってね、だけども7科目で420点ないと不合格ですよ。』ということ。
科目 | Aさん | Bさん | Cさん |
経済学・経済政策 | 70点 | 70点 | 100点 |
財務・会計 | 70点 | 70点 | 100点 |
企業経営理論 | 70点 | 70点 | 100点 |
運営管理 | 70点 | 70点 | 100点 |
経営法務 | 40点 | 40点 | 100点 |
経営情報システム | 50点 | 40点 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 50点 | 50点 | 20点 |
合計点 | 420点 | 410点 | 620点 |
合否 | 合格 | 不合格 | 不合格 |
Cさんの合計点が1番高いですが、40点未満の科目があるため不合格です。
Bさんは40点未満の科目はありませんが、合計で420点に満たないので同じく不合格です。
この中で合格できるのは、40点未満の科目がない、かつ、合計点が420点以上のAさんだけです。
一次試験では得意科目を作ることも大事ですが、それ以上に苦手科目を作らないようにすることが大事になります。
経営法務は合格率が毎年10%程度ととても難易度の高い科目です。こういった科目は最初から60点を超えることを目標にするのではなく、40点を下回らないことを目標とするのも戦略の一つです。
また、一次試験には科目合格制度というのものがあります。
② 科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
科目合格の場合は、翌年度と翌々年度の一次試験を受験する際に当該科目を免除することができる制度です。
この制度を使って複数年で中小企業診断士の合格を目指す人も少なくありません。
科目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
経済学・経済政策 | ◯ | 免除 | 免除 |
財務・会計 | ✕ | ✕ | ◯ |
企業経営理論 | ◯ | 免除 | 免除 |
運営管理 | ◯ | 免除 | 免除 |
経営法務 | ✕ | ◯ | 免除 |
経営情報システム | ◯ | 免除 | 免除 |
中小企業経営・政策 | ✕ | ◯ | 免除 |
合否 | 不合格 | 不合格 | 合格 |
1年目で不合格だとしても全く諦める必要はありません。
科目合格制度を使って翌年の合格を勝ち取りましょう!
続いて、二次試験(筆記試験)です。
【合格基準】
筆記試験における総点数の 60% 以上で、かつ、1科目でも満点の 40% 未満がなく、口述試験における評定が 60% 以上であることを基準とします。
なお、口述試験を受ける資格は、当該年度のみ有効であり、翌年度に持ち越しすることはできません。
考え方は先ほどの一次試験と同様です。
『各科目は最低でも40点は取ってね、だけども4科目で240点ないと不合格ですよ。』ということ。
ただし、二次試験(筆記試験)には科目合格制度というものはありませんので1度の試験で各科目は最低40点、合計4科目で240点取らないと不合格になります。
二次試験(筆記試験)は記述式の試験であり、かつ解答が公開されていない試験です。過去問で勉強しても正解が分からないためとてもストレスを感じました。
勉強方法の比較 ~独学・通信講座・予備校~
中小企業診断士の試験概要が分かったら次は勉強法の検討です。
勉強法は独学・通信講座・予備校の3種類ありますがどれも一長一短あります。
金銭面だけでいうと独学が1番お財布に優しいですが、お金と時間のバランスを考えると通信講座という選択肢もありです。
勉強仲間を作って頑張りたい方は予備校に通うのもありです。
ご自身の置かれている状況や自分の性格にあった勉強法を検討してみてください。
僕はとにかく家計に負担をかけたくなかったので独学を選択しました。
合格に必要な勉強時間と科目別難易度
中小企業診断士は難関国家資格の一つで、ストレート合格率は1桁%です。
したがって、合格に必要な勉強時間も相応の時間が必要になります。
独学・通信講座・予備校の勉強方法によって多少バラつきはありますが概ね1,000時間の確保が必要です。
独学でしたが、一次試験は1,000時間、二次試験は200時間、合計1,200時間勉強しました。
一次試験の各科目の勉強時間は得意・不得意によって差が出ますが僕の場合は以下の勉強時間でした。
科目 | 勉強時間 | 難易度 | 特性 |
経済学・経済政策 | 213時間 | 難 | 理解系 |
財務・会計 | 158時間 | 普通~難 | 理解系 |
企業経営理論 | 212時間 | 普通 | 理解・暗記系 |
運営管理 | 140時間 | 普通 | 理解・暗記系 |
経営法務 | 140時間 | 難 | 暗記系 |
経営情報システム | 102時間 | 易~普通 | 暗記系 |
中小企業経営・政策 | 89時間 | 易 | 暗記系 |
TOTAL | 1,054時間 |
財務・会計は得意科目の一つでしたので平均的な勉強時間より短いですが、経済学・経済政策は大の苦手で7科目の中で1番時間をかけた科目でした。
経済学・経済政策は各年によって難易度のバラつきが比較的少ない科目ですので、ある程度理解できれば得点が計算できます。
一般的には二次試験に関連する3科目(財務・会計、企業経営理論、運営管理)に大半の勉強時間を割くことになるでしょう。
一方、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策は暗記3科目とも言われており、試験直前期に勉強するのがおすすめです。
続いて、二次試験(筆記試験)ですが、人によって大きなバラつきがあります。
少ない人は60時間程度の勉強時間で合格していますが、多い人だと400時間を超える人もいます。
僕は合計206時間の勉強時間でしたので平均的な部類に入りますが、内訳をみると事例Ⅰ~Ⅲの3科目で112時間なのに対し、事例Ⅳの1科目だけで94時間かけています。
二次試験(筆記試験)も一次試験同様に財務・会計で点数を稼げるかで合否が大きく関わってきます。
事例Ⅳだけは一次試験前からも少しずつ勉強をしていましたが、事例Ⅰ~Ⅲは一次試験後に勉強を始めました。
一次試験・二次試験おすすめテキスト
独学者にとってテキスト選びはとても重要です。
合格に必要・不要なテキストについては以下の記事に詳しく書いていますので参考にしてみてください。
独学に向いている人
各々が置かれている状況や性格は千差万別ですので、独学が向いてない人や予備校が向いている人などそれぞれいます。
ではどういう人が独学に向いている人なのでしょうか。
独学が向いている人
- コツコツと勉強を続けられる人
- 勉強時間を多く確保できる人
- 受験費用を安く抑えたい人
通信講座が向いている人
- 本業や育児・家事で忙しくあまり時間がない人
- 費用対効果の高さを重視したい人
- 通える予備校が近くにない人
予備校が向いている人
- 勉強仲間を作ったほうが勉強が捗る人
- 強制的に勉強する環境を作りたい人
- ある程度お金に余裕がある人
独学は他の勉強法に比べて多くの時間がかかりますが、費用面では1番安く済ますことができます。また、時間の制約がありませんので余裕がある時に一気に勉強できるのもメリットです。
おすすめの勉強順
一次試験は7科目ありますが効率良く勉強するためにおすすめの勉強順があります。
↓
財務・会計 or 企業経営理論
↓
運営管理
↓
経済学・経済政策
↓
中小企業経営・政策
↓
経営法務 or 経営情報システム
↓
経営法務 or 経営情報システム
まずは二次試験に関連する3科目を勉強するのがおすすめですが、その中でも財務・会計 or 企業経営理論のどちらかから始めると良いです。
財務・会計は一次試験、二次試験ともにキーとなる科目ですので少しでも早く解けるようになると後々の勉強に余裕がでてきますよ。
運営管理の次は経済学・経済政策がおすすめです。
経済学・経済政策は二次試験に関連しない科目なので、正直なところできるだけ時間をかけたくないですが、経済学を始めて学ぶ方は想定以上に時間を要することになります。
理解までに時間はかかりますが、一度理解をすると比較的安定して得点できる科目でもあります。
十分に70点を超える高得点も期待できます!
最後は暗記3科目ですが、その中でも中小企業経営・政策を最初に勉強することをおすすめします。
理由としては、中小企業経営・政策で学ぶことが他の科目(企業経営理論、運営管理)にも好影響を与えるからです。
中小企業経営・政策では中小企業が置かれている状況や目指すべき方向性について学ぶことができます。中小企業診断士の元となる考え方は、他の科目でも有効です。
だったらもっと早くに勉強したら良いのでは?という声も聞こえてきそうですが、あまりに早く勉強しても暗記科目である中小企業経営・政策は試験前に再度勉強し直す必要があるのでこの順番がおすすめです。
過去問を解くことを最優先にする
一次試験でも二次試験(筆記試験)でも同じですが過去問を解くことを最優先にしてください。
過去問はどんな優れた参考書よりも最高の教材です。
過去問を解いて解いて解きまくってください。
僕も過去問を解きまくった一人です。科目によっては7週くらい解いたと思います。
試験勉強をする上で大切なこと
試験勉強で最も大切なことを毎日勉強するということです。
当たり前のことを言ってるかと思うかもしれませんが、人間は弱いものでついつい今日は疲れたからやめておこうと思ってしまいます。
1日サボると次サボることへの抵抗がどんどんなくなってきます。
そうするといつの間にか1週間・2週間と勉強しない日ができてしまい、ついには受験勉強を諦めてしまいます。
そうならないために勉強をコツコツと続ける秘策は好きな科目を見つけることです。
得意じゃなくても構いません。
勉強してて楽しいと思える科目が2つくらいあると気持ちが楽になります。
僕の場合は、経済学・経済政策が大嫌いでグラフを見るとそっと過去問を閉じたくなる日々もありました。
そんな時には楽しいと思える財務・会計の過去問を開いて勉強をしない日というのを作らないようにしてました。
あなたも好きな科目を見つけて毎日少しでも良いから勉強するクセを作ることが大事です。
まとめ:楽しく勉強して中小企業診断士を目指そう!
中小企業診断士の勉強は本当に楽しいですし、一生使える知識も手に入ります。
勉強してると挫折してしまいそうな時もくるかと思いますが、合格した日を想像して一歩一歩頑張っていきましょう!
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